しなってモウダ
青苧復活夢見隊:2012/10/20
しな布をご存知でしょうか。
新潟との県境に程近い、鶴岡市の関川集落で織り継がれている古代布で、原料はしなの木の皮です。
夢見隊に入ってから、関川にはしな布があるということを聞いていたので、毎年この時期に開催されるというしな織まつりをめがけて行ってきました。
私の普段の行動範囲は村山地域がほとんどで、月山を越えることはほとんどないのですが、月山の向こうはまた違った山形だなあということを行く度に感じます。
内陸よりもさらにゆったりしている。
山並みも包み込むような優しさが感じられます。
よそ者の私にとってはこっちがほんとの山形じゃないかなという気さえします。
月山を越え、鶴岡からさらに30kmほど南西に下ったところに関川はありました。
当初は展示会のようなものなのかなと思っていましたが、幟が立ち、踊り子が舞い、農産物を売るテントが立ち並ぶ様を見ていると「あ~、ほんとにまつりなんだ」と思いました。
それも地域挙げてのまつりでした。
建物の中に入るときれいな織姫さんが、一日署長よろしく一日織姫で織りの実演をしていました。
初めてとは言え、着物を着て機織の前に座っている織姫さんはさすがに絵になります。
若い女の人はお客を呼びますねえ。
右から左からお客さんに話しかけられ、シャッターを切られ大忙しの様子でした。
実際に織っている糸を触らせてもらいましたが、木の皮から採った繊維だけあって随分硬かったです。
織りに至るまでの手順も青苧と比べると数多く、着物や寝具など肌に直接触れる用途にも向かないにも関わらず、よくこれだけの手間を掛けて昔の人は続けてきたものだなあと感服します。
そして暖簾にしろ、バッグにしろ、しな織には原料が木ならではのどっしりとした落ち着きと正直さが感じられます。
ある種、私がこの地域に感じた山々の佇まいや空気がしな織という形に結晶しているかのようでした。
日本列島、しなの木など至るところに生えているのに、なぜここが静岡の葛布、沖縄の芭蕉布と並び日本三大古代布と呼ばれるほどの里となったのか。
それはやはりこの土地がそうさせるだけの場所であったのだろうと思います。
帰ってきてから知りましたが、しなの木は地方により、マダ、マンダ、モウダ、モワダなどと呼ばれるそうで、アイヌ語の「結ぶ」という意味の語に由来するそうです。
なんだか土地に感じた私の感性が言葉によってぎゅっと結ばれた気がします。
関川での滞在も往復も超特急の旅でしたが、帰ってきてこれを書いている今は随分ゆったりと豊かな気分です。
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