お知らせ

馬医草紙絵巻

青苧復活夢見隊:2013/05/16

先日、葛布展で山形に来られた大井川葛布の村井親方と飲んだ際、貴重な情報をいただきました。

かつて、馬の体調が悪いときには青苧を薬草として用いたのだそうです。

その巻物が東京国立博物館にあるということで、早速行ってきました。

 

五月の東京は素晴らしい。

まさに風薫る五月という言葉がぴったりです。

時節の素晴らしさに加え、博物館のある上野公園は外国人もいる、幼稚園児もいる、たくさんの芸術作品に囲まれ、人々は皆こざっぱりした格好で楽しそうにゆったりと歩いてる。

この世の極楽という感じです。

山手の奥様方の会話が洩れ聞こえてくるだけでも楽しく過ごせます。

 

さて、親方からのキーワードを頼りに受付で問い合わせたところ、色々と調べてくれました。

出てきたのは「馬医草紙絵巻」。

現在は展示中ではなく、6月25日から8月4日の期間で公開されるとのことでしたが、絵巻のどの部分が展示になるかは学芸員の判断によるらしく、博物館を訪れても青苧が描かれた箇所を見ることが出来るかどうかは分からないとのことでした。

ということで、気を利かせてくれた受付のおねえさんが東京国立博物館のホームページから画像を見せてくれました。

薄暗い館内で離れて見るよりかえってこちらの方がよく分かります。

 

青苧は別名、苧麻やからむしとも言いますが、コロモグサ、カラソとも言うのだそうです。

画像を見ると、青苧の図と一緒に衣草、唐苧の文字を見ることが出来ます。

この馬医草紙絵巻は鎌倉時代に作られたもので、当時、武人の宝であった飼馬の薬法を記しています。

馬医道の守護神である伯楽、神農など和漢十人と共に、青苧を含む17種類の薬草が紹介されています。

青苧は鉄分、ビタミンも豊富ですが、やはり繊維質が多いですから、馬の体調不良を治すのにはもってこいだったのでしょうか。

昔我が家で買っていた犬も体調が悪いときにはその辺の草を食べていました。

 

ちなみに「医」という字は太古には「毉」という字が使われ、紀元前後に「醫」に変わり、現代は「医」が使われています。

パソコン上ではちょっと分かりづらいですが、古代の医には「巫」という字が使われています。

巫は「神の意思を伺うことのできる人」という意味で、神仙や精霊から病気の原因や治し方の情報をもらっていました。

醫という文字には酉、酒つぼという字が使われています。

薬草を発酵させた薬酒が使われたのでしょう。

そして現在は、自然科学が進歩し、物理学や化学による医療が行われています。

文字の変遷とともに、医療の内容も変わってきたのです。

 

さしづめ、この絵巻を的確に表すなら「馬醫草紙絵巻」となるでしょう。

実際、戦前までは醫の字を使っていました。

同じことは麻薬の字にも言え、本来はしびれるの「痲」を用いて「痲薬」と書くべきところ、現在は植物の麻の字が使われており、世間に麻(大麻)の誤ったイメージを与えてしまっています。

 

ちょっと話が飛んでしまいましたが、お馬さんは青苧食べてたんですね。

それも鎌倉時代ということですから、800年前のことです。

鎌倉時代より前にそうした使われ方をしていた可能性も大いにあり、食歴ということで言えば最低800年はあることになります。

大事な馬に食べさせていたもの、人間も食べていた可能性はあるんじゃないですかね。

これ立派な食歴になりませんか。

 

それにしても世の中には隠れたものがきちんと存在するものですね。

「医」が表面的な肉体の世界しか見ていないのに対し、自分の視点も「醫」、さらには「毉」と広げることが出来れば、世界はもっと豊かに見えてくることでしょう。