お知らせ

葛布展

青苧復活夢見隊:2012/05/02

大沼デパートに行ってきました。

3月に訪問させていただいた静岡の大井川葛布さんが今日から8日までの会期で葛布展を開いているので、代表、隊長らとお邪魔したのでした。

ちょうど桜の季節でもあり、桜染めのものなどもありましたが、「服薬」という言葉は昔は文字通り着るものに薬を染めて体内に摂り込むことを指していたのだそうです。

前回のブログで書いた「衣食住」の衣の重要性がこんな言葉の一つからも伺われます。

 

色とりどりの染料で染められた葛布製品の数々を見ていると、私たちが知らないこと、忘れてしまったことを物言わぬ態度で諭されているような気がしました。

「私たちは変わらずこうだけど、あなたたちはどうなの」と。

これまた前回のブログで書いたように何でも簡単に手に入る世の中になった結果、一つの製品の背景は見えなくなってしまったように思います。

 

果樹栽培をしていても地面から上の「木」の部分にばかり注意が行ってしまいがちになります。

でもその「木」を作っているのは地面から下の見えない根っこの部分。

なまじっかものが見えるということは見えないものを見るのを非常に難しくします。

見えないものが見えない内は見えてることにはならないのでしょう。

 

そんなことを考えながら歩いていたところ、肌触りで強く興味を引くものがありました。

葛布タオル。

乾いた状態のタオルは光沢のあるせいか見た目にもパリッとした印象ですが、水に濡らすとふにゃっと柔らかい感触に一変します。

優しさが肌にまとわりつくような感じで、説明書きには「濡らして使うと揮発熱の効果でとても涼しく感じます」と書いてあります。

これからの屋外作業用にはありがたいと一つ購入しました。

暑いときは濡らして首などに巻く他、使用後はシャワーなどで汗を流すときの洗いタオルとしても使えるようです。

葛布は乾きも早く、アラントインという物質が肌を強く美しくする効果もあるとのことで、これは一石二鳥どころではありません。

私が買ったのはスポーツタオルですが、普通のタオルやフェイスタオルもありました。

展示を見に行かれる方は実際に触ってみることをお勧めします。

 

なんだか大井川葛布さんの宣伝のようになっちゃいましたが、たまには違う素材のこともいいでしょう。

他にも帯地やのれん、帽子、スカーフなど様々な作品を展示しています。

大井川葛布展、会期は5月2日(水)~8日(火)。

会場は大沼デパート山形本店7階ギャラリーです。

 

自分の寝床

青苧復活夢見隊:2012/04/03

自分用青苧パッドを購入しました。

以前の試作第一号は企画展があれば展示したり、どこかに見本として持って行ったりで試しに使ってみるというわけにはいきませんでした。

まずは実際に使ってみないと分からないということで村上代表、柏倉隊長、私と新たに三枚金澤屋さんに注文したのでした。

今回のは第一号より若干幅も大きく、生地の色も表が藍色、裏が白となかなか素敵な風合いです。

いざパッドを広げてみるとまずはあの独特のシャリシャリ感がなんとも言えません。

布団を敷くのにこれほどウキウキ、ニンマリすることもあまりない。

「これからこれで寝るんだ~」という就寝スイッチの切り替えにもなります。

 

私は冬の間は布団の上に毛布を敷いて寝ていたので、いきなりパッドに変えたことでこれまでと違うなという気はしましたが寒くはありませんでした(青苧は湿度の調整能力が高いので、夏は涼しく冬でも冷たさを感じにくいのです)。

寝心地としてはシャリシャリが摩擦の役目を果たすのか、体が流れるということがありません。

身体と青苧がピタッと一体になっている感じ。

そして手で触っている時にはシャリシャリする音が、寝てみると全く気にならない。

これは面白いなあというのが初夜の正直な感想です。

 

先日、静岡の大井川葛布さんを訪問した際、親方が「『衣食住』というように、人が生活していく中で一番大事、かつ手にするのが難しいのが『衣』なんだ」というようなことを教えてくれました。

『食』は採集、狩猟、栽培にせよ、手段はいろいろあり、割合苦労せず手に入れられることも多い。

『住』については雨風さえ凌げれば、それこそ洞穴のようなものでも事足りる。

でも『衣』は動物の皮を利用するなどの方法でなく、植物の繊維から着るものを作る場合途方もない労力と時間が必要です。

よく事故などで生き埋めになったまま何日も何も口にしないで過ごしたなどの例が見られるように、食べ物がなくてもある程度の期間は生存できますが、例えば冬の寒さの中に丸裸で放り出されて何日も生きていけるものではありません。

 

私も去年一年青苧栽培全般に関わってみて、一枚の布、一本の糸を作ることがどれほど時間と根気の要ることか身をもって体験しました。

現在は糸や布、着るものなどは身近に溢れていて、高価な代償を払わなくても簡単に手に入れられるので、これまでそういうものに思いを馳せることが全くなかったわけですが、自分の経験と親方の言葉をつなぎ合わせてみるとむべなるかなと思います。

私は農業者でもあるので、食べ物を栽培するのと衣服を作るのとどちらが大変かと言われれば、実体験としてその答えは明白に出せます。

 

現代日本では『食』のことは何かと話題になりますが、『衣』についてはほとんど誰の意識にも上らなくなりました。

自分の身に付けるものを自分で栽培することがなくなった、作業が機械化されて自分の手で生み出す必要がなくなった、そのことが『衣』を日常の場面から遠ざけたのだと思います。

逆に言えば、それだけ自分達でそういうものを作るということがしんどかったのでしょう。

 

今回はそんな思いも手伝って余計に貴重に思えるパッドですので、しみじみと体全体で寝床を味わいたいと思っています。

 

春遠からじ

青苧復活夢見隊:2012/03/30

静岡に葛布&木綿見学に行ってきました。

思えば東京より西に行くのは何年ぶりだろう。

温暖な気候、柔らかな日差し、雪のない光景。

毎日を雪に囲まれて過ごしてきた身としては、雪がないことに肩の荷がすっかり軽くなったように感じられました。

こんなに違うのね~。

見事な晴天の下を心地よい風に吹かれながら歩いていると、山形の冬の曇天がなんだか遠い国のことのように思えます。

極端に言うとこの晴天の下では何でも出来るような気さえしてくる。

気候ってこんなにも人の気分を左右するもんなんですね~。

そして東北の冬はやっぱり厳しいです。

 

さて、この旅の一番の目的であった青苧原麻を使った新製品開発については、ありがたくも葛布の親方とおかみさんのご協力をいただきながら進めていけることになりました。

そして木綿見学に行かせていただいた先生のお宅では矢のように飛んでくる薀蓄に圧倒されつつも、豊富な知識と実技によってたくさん勉強させていただきました。

さらに旅のきっかけを作ってくれた金澤屋のブログ係長にはいろいろ楽しい思いをさせてもらいました。

係長がいなかったらこの旅は実現しなかった。

お三方に感謝。

この先の展開が楽しみです。

 

さて、山形に帰ってみると意外や意外、わずか3日ほどの間に景色は一変。

畑の雪も土に吸収されたか、水蒸気となって空気に舞ったか、かなり消えていました。

いよいよ山形も春近し、です。